David Bevans 著
(本文はMendix社の記事を翻訳したものです。原文と動画はこちらからご覧いただけます。)
◆キーとなる4つのポイント
●ローコードによるデジタルトランスフォーメーションにより、Canada Postは、衰退する手紙類などの郵便サービス(10年間で郵便物が60%減少)から荷物などの小包配達サービスを立ち上げ、その後1年間で小包配達ビジネスを25%成長させました。
●小包配達サービスのために、PostNLは5人だったチームを50人に、10個だったアプリのポートフォリオを100個に増やしました。
●ローコードを使って、PostNLは1日1,000万件の取引をサポートするコアサプライチェーンロジスティクスシステムを構築し、2018年には2億5,000万個の小包を管理しました。
●PostNLは、450万人のユーザーが小包の配達をフォローできるアプリをローコードで構築しました。
Canada Post社とPostNL社という2つの宅配便会社の創業者は、200年以上前に、「郵便物を届けることで人々をつなぐ」という1つの目的のために組織を設立しました。
しかし近年、手紙などの郵便物は減少し始めており、この2つの物流企業は何世紀にもわたって行ってきたことから離れ、荷物等の小包配達市場に進出することになりました。そのためには、使用する技術を変え、仕事のやり方を変え、仕事に対する考え方を変える必要がありました。しかも、それを大規模に行うというものでした。
PostNLのCIOであるGerrie de Jonge氏とCanada PostのCIOであるAnik Dubreuil氏は、ローコード開発を用いて、レガシーシステムを更新するだけでなく、会社全体の考え方を変えました。このデジタルトランスフォーメーションは両企業にとって成功し、新たな競争市場への参入と人々のつながりの継続を可能にしました。
かつて、Canada Postが財政難に陥ったとき、簡単に解決できたのが切手の値上げでした。手紙を送るための切手代が上がったことで、問題はすぐに解決しました。
しかし、デジタル化された現在の世界では、郵便物は減少しています。Dubreuil氏によると、「10年前には80億通の郵便物が配達されていました。今は32億通です。」この急激な減少により、Canada Postは手紙などの郵便物の配達から荷物などの小包配達へのシフトを余儀なくされました。これは彼女が言うように「言うは易し、行うは難し」です。自分たちを再構築し、Amazonのような小包配達の大手企業に対抗するのは簡単なことではありません。くわえて、255歳という年齢(歴)であれば、なおさら難しいでしょう。
Dubreuil氏は「私たちはそのようにはできていません。私たちのDNAはそのようなものではありません。それはビジネスにも言えることですが、ITにも言えることです。」と言います。
Dubreuil氏は、郵便から小包への移行を可能にする大規模なデジタル変革戦略の策定を自らに課しました。
de Jonge氏とPostNLも同様の課題を経験しました。同じく何世紀もの歴史を持ち、郵便事業を中心に成り立ってきたPostNLでは、郵便サービスが10~12%減少し、ビジネスに大きな影響を与えていました。
そこでde Jonge氏は、ベネルクスにあるすべての配送ネットワークを俯瞰するような、小包配送のビジネスモデルに移行しました。それにはオンラインショッピングでの購入のような通常の小包の配達だけでなく、食品、医薬品、ダイヤモンドなどの特殊な小包も含まれていました。
小包配送への移行に伴い、de Jonge氏はチームを5人から50人に、アプリケーションのポートフォリオを10個から100個に増やしました。これらのアプリケーションはすべて、特定のビジネス上の問題を解決するために設計された特定のソリューションであり、長期的に見れば急成長に対応するための持続可能な方法ではありませんでした。彼らは、物流アプリケーションの全体像を見て、改めて見直す必要がありました。
ロジスティクス(物流)におけるローコード・デジタルトランスフォーメーションの実現
アプリケーション全体を刷新するという大規模な作業は、PostNLのITチームでは手に負えないものでした。適切なソフトウェアエンジニアリングの経験を持たない de Jonge 氏にとって、ローコード開発プラットフォームは次の論理的ステップのひとつでした。「自分たちにはソフトウェアエンジニアリングの能力がなかったので、Mendixやローコードは論理的に検討すべき選択肢でした。その結果、現在はMendixをベースに物流システムの中核を構築しています」と述べています。
Mendixでマイクロサービスアーキテクチャを活用することで、PostNLは中核となるサプライチェーンシステムを再構築することができました。この新しい大規模な環境の成果は、大きな影響を与えています。昨年、PostNLは約2億5千万個の小包を配送しましたが、これは一昨年に比べて20%の増加です。小包1個あたり、18のイベントまたはタッチポイントがあります。de Jonge氏のチームは、450万人のユーザーが小包の配送状況を確認し、必要に応じてルートを変更できるアプリも開発しました。
カナダでのEコマースの普及率は9%と、他国に比べて低い数字でした。しかし、Canada Postの小包事業は前年比25%の成長を遂げていました。その成長がITに与える影響も出始めていました。Dubreuil氏は、ITシステムをスケールアウトさせる必要があり、しかもそれを迅速に行う必要がありました。
そこでDubreuil氏は、これまでとは異なる方法をとることにしました。
Dubreuil氏は開発チームにアジャイルを導入しましたが、Canada Postのデジタルトランスフォーメーション構想の規模を考えると、古い伝統的な開発手法はアジャイルと相容れないものでした。そこでDubreuil氏は、開発ツールとしてMendixを選択しました。Mendixは、新しいアジャイルプロジェクト管理手法に合致しており、Canada Postのコアシステムを再構築することができました。
キーボードに手を置いてコーディングすることに慣れている開発チームにとって新しい働き方には緊張しましたが、Dubreuil氏は一念発起して、Canada Postの住所録システムのリファクタリングにMendixを使い始めました。
Canada Postの住所録システムについて、Dubreuil氏は「これこそが我々の仕事の核心です。これらのシステムは20年前のものであり、小包配達ビジネスに参入するという我々の野望をサポートすることはできません」。旧式の住所録システムはGPSに対応しておらず、配達員のニーズに応えるダイナミックなルーティング機能もありませんでした。
Canada Postは、シーメンス社の製品を多く使用しています。Dubreuil氏は、シーメンスとMendixの合併は、ITレベルだけでなくOT(オペレーショナルテクノロジー)レベルでもアプリケーションを管理できるという点で、彼らにとって天国のような組み合わせだったと語っています。Mendixの全体的な管理能力はDubreuil氏が言うように、Canada Postにアジャイルへの変革を加速し、DevOpsへの変革を加速させ、ローカルプラットフォームを活用して、より速く、より安く、実際に市場に投入して、小包配達の機会を活用できるようにしてくれました。
カルチャーシフトへの取り組み
両社とも、アプリケーション開発プログラムやプロセスの規模を拡大するなど、大規模なデジタルトランスフォーメーションを行っており、テクノロジーだけが必要な訳ではないことを実感しました。IT部門とビジネス部門の作り手である「人」が協力することが大切なのです。
これは単なるツールではありません。もうひとつの仕事のやり方なのです。
de Jonge氏は、組織にアジャイルを導入し、DevOpsのプラクティスを制定しました。「プロジェクトベースのアプローチからチームベースのアプローチへと組織を転換しました」と彼は言います。そのためには、組織全体の再編成が必要でした。歴史的に見てもデジタルトランスフォーメーションの成功率は30%にとどまっているにもかかわらず、PostNLがデジタルトランスフォーメーションを成功させたのは、アジャイルとローコード開発を組み合わせたからです。これはビジネスと顧客に素早く成果を提供し、示すことができるからです。
「これは単なるツールではありません。もうひとつの仕事のやり方なのです」とde Jonge氏は言います。
Dubreuil氏も同様に、デジタルトランスフォーメーションについて考えています。
「我々は何かを導入する際に、単に別のツールを購入することを検討するかもしれません。契約して、ツールを導入して、チームに与える。従来ならこれでうまくいったでしょう。しかし、これは間違っています。これではうまくいきません。そこで、ウォーターフォールからアジャイルに移行させ、3ヶ月間で全員にアジャイルのトレーニングを行うのです。トレーニングだけでは十分ではありません。今までとは違うやり方で仕事をする方法を知る必要があるのです。」とDubreuil氏は言います。
Dubreuil氏は、チェンジマネジメントとハンドホールディングの必要性を過小評価しているわけではありません。
Canada PostにとってMendixがとても合っていたのです。Mendixが、Canada Post社に新しい仕事のやり方を提供できたのです。
Mendixによって、Canada Postのチームは、ITの経験がほとんどない人も含めて、アプリを作り始める機会を与えられました。ローコード開発では、製品に関する知識を活かして、問題に対する解決策を考え、それを作ることができるのです。
2019年6月11日に公開されたものです。
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